「吟詠というものに興味はあるけど、いったいどういうものなんだろう・・・」



  実際、伝統芸能の中では、吟詠はそれほど有名ではありません。
  "~家"といった数百年も続く名門があるわけでもありません。


  ですが、逆に言えば極端に高貴なものや、高尚なものでもないということ。
  つまり、これからはじめてみようと思っている皆さんにとって、
  身構えするような「伝統」が付きまとってくることがそれほど多くはないということでもあるのです。
  そんな吟詠の世界を、ちょっとのぞいてみませんか?


  これから、吟詠が具体的にどういったものなのかをご紹介していきます。

ここに来る皆さんは、詩吟、吟詠を聞いたこともあるかと思います。
吟詠は、普通の歌、とはちょっと歌い方が違うことも、たぶん何となくは分かっている方も多いでしょう。


何が違うのか。
まず、吟ずるものですが、題材が決まっています。
絶句、律詩は問いませんが、今までに作られた漢詩。それから、日本の歌人達の残した和歌です。


それから、歌い方も独特です。
「節調」という言葉があります。メロディ、というよりは節回しといった方がよいでしょうか。これにならって吟じていくことになるのです。


いわゆる、詩吟の流派の違いは、この節調がそれぞれの流派によって異なることにあります。
香雲堂吟詠会では初代、二代目の宗家がそれぞれの漢詩独自に節調をもうけており、これを吟じていくことになるわけです。

もともとは、平安時代の「和漢朗詠集」に始まり、室町時代の声明(しょうみょう)、朗詠(ろうえい)が基礎となっています。
自分の心や、気持ち、感じたことを、五言や七言の漢詩、また、日本古来の和歌に託して表したものに、節を付けて詠じたものです。
花鳥風月、季節の移ろい、そして喜び、悲しみ、恋。人の詩で何かを感じ、自分でも綴ってみたくなる事ってありますよね。


古くは中国の大詩人、李白・杜甫・白居易等の漢詩が有名ですが、日本でも、平安時代から明治時代まで、漢詩を作るということは、文化人のステイタスでもあったようです。菅原道真・武田信玄・西郷隆盛・夏目漱石なども、心に染み入る漢詩を残しています。